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「……そうか」
空にぽっかりと穴が空いたような気がした。
「都に住む上流階級のおじさんだって」
「…………」
「信じられる?
30も超えた人とよ?
きっとデブで傲慢で汚らしいんだから」
悪態をつく彼女の目にはうっすらと涙が浮かび始めていた。
「でも、仕方ないんだ。
向こうから話が来たって……。
……父様押しに弱いし、上の人から言われたら従うしか無いし」
目から溢れ出した涙は再び頬をつたい始めた。
決められた道を行く。
自由が約束されない道。
上流階級ともなれば醜い権力争いに巻き込まれるのは必死。
しかも、下級貴族の彼女は確実に潰しの的である。
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