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彼の質問にそんなことは無いと首を振る。
そして、自分のスカートのポケットに手を入れて、白いハンカチを取り出した。
彼女のイニシャルが入ったそれには、家紋であろう盾の中に写る女神の刺繍が小さく入っていた。
「ハンカチ交換しようか」
「はっ?」
何で?と言いたげな顔で返事をすると
「あげる」
と彼の承諾を聞かず、無理矢理、手にハンカチを握らせた。
そして、もう行くね。とスカートを翻して立ち上がる。
手にはしっかりと水色のハンカチが握られていた。
そんな足取り軽く遠のく彼女を見つめながらシオは白いハンカチを大事に握り直した。
『…………』
胸に秘めた思いを込めながら……。
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