墜落

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何処までも 何処までも 重力に逆らって昇っていく 此の後に待ち受けているのは 唯 墜落のみ   様々な想い出が 走馬燈のように巡り 知らない内に僕の心は 穏やかな気持ちで一杯だった   そんな時だった あの声がしたのは 何故か必死で 苦しそうな声 僕を呼ぶ 三つの声   其の声達が 余りに必死だったから 僕は 昇るのを 止めたいと思った   上昇は止まり、 ゆっくりと下降。   目を開けたら 僕の大好きな人達 三人の安堵の表情で 僕は星になりかけたのだと悟る   抱き締めてくれる 温かな腕 静かに無器用な笑みを くれる瞳 怒ったような ふてくされたような 表情 三つとも 僕の大好きなもので 僕は心から 「戻ってきて良かった」 と思えた   "もし上昇…そして墜落してしまっていたら" そう思うと 怖くなる だって… そうしたら僕は 大切な人の「何か」を 奪っていたかも知れないから。
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