~第一章~

4/5

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
涙が溢れ出る。 いつも悲しい時、苦しい時…淋しい時には側に居てくれた吭。 温かい指で涙を拭って…抱きしめてくれたこの腕も…今は冷たくて……。 楓:吭……どうして死んじゃったの?…ねぇ…吭…いつもみたいに笑ってよぉ……ねぇ……私の名前呼んでよ…楓って…呼んで…。(吭の手を握り、自分の頬に当てながら涙を流す) でも吭の手は動かない。 起き上がって…名前を呼んだり、微笑みかけることはなかった。 父さんや母さんが吭のことは辛いけど、亡くなってしまった者は帰って来ないって…現実を受け入れなさいって……私に言う。   ――吭の居ない現実――  ――そんなもの受け入れ     られる訳がない―― 吭には…私には…お互いが必要な存在なんだよ? いつも側に居て、いつも一緒に………。    ―嗚呼…そっか…― 楓:吭、私がそっちに逝けば吭に逢えるんだね?また一緒に笑ってくれる? そう思って私は無意識に鞄に入っているカッターナイフを取り出す。     カチカチカチ 自分の手首を切り、流れ出る真っ赤な血を見ていた。何故かとても安心している自分がいる。       ~Next~
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加