ペットの死(飼い猫の視点)

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ペットの死(飼い猫の視点)

この前病気になったんですよ、末期のね。 で、生まれて初めて飼い主との別れを経験したわけですわ。 正直最初は別れって簡単なもんだと 思ってたのよ。 野良猫時代は普通のことだったからさ。 あのね、俺が間違ってた。あれは猫が経験するもんじゃない。 冷血動物だね、は虫類だけが耐えられるものだよ。 最初に動物病院に入った時さ、めちゃめちゃ痛くて脚そろ~って動かしてそろ~っと尻尾ひきずったのよ。 10秒くらいかけてさ。 でなんか体が動かなくなって診療台の上でへたりこんじゃったのさ。 そしたら飼い主がさ「苦しいのか」とか目で訴えてくるの。 同じ過ちは2度繰り返さないのが俺よ。 だからニャーンて鳴いたのさ。 えぇ、そりゃもう鳴きましたとも。 全てを忘れて鳴いたよ。 家に迷い込んだ時のヤツの暖かいまなざしとか、 初めて膝で寝たときにホントに気持ちよかった事とか、 エサをくれる時の呼び声とか色々思い浮かんでくるのを頭から振り払ってね。 だって長引くと飼い主がつらいだろうって思ったからね。 そしてらエライ事になった。 もうすごい即死。 そして飼い主のすごい涙。 幅3cmくらい。 昔の漫画だけど星飛雄馬やはだしのゲンにも負けない。 それで横見たら飼い主がすごい悲しそうな顔を俺の方に向けてんの。 ホントごめんなさい。 正直「飼い主を苦しみから救ってやるのが義務だぜ!」 なんて見栄張らないで素直に最後まで悪あがきしてやればよかった、 せめて自然に任せて死ねばよかったと思ったよ。 心の底から承諾書にサインさせた事を後悔したね。 でも埋葬が終わって天国で 「飼い主って寿命ありすぎるよな!これだから人間は。今度は長生きするカメにでも生まれるか」とか言っちゃてんの。 ホント俺ってダメ猫。 …もう泣かないで下さい。
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