596人が本棚に入れています
本棚に追加
「いただきまーす。」
陽人の元気な掛け声で、二人の夕食が始まった。
メニューは、冷凍食品のハンバーグに、荒く切った千切りキャベツ、洗っただけのミニトマトを付け合わせた。あとは白いご飯に、インスタント味噌汁。
いつもはカップラーメン等で済ませる僕にとっては、理想の食卓だ。
「ねぇ、マヨネーズかけて。」
陽人が僕をつつく。
僕が、キャベツにマヨネーズをかけてやると、陽人は不機嫌な顔をした。
「ハンバーグだよ。」
「ハンバーグ?マヨネーズかけんのか?」
陽人が頷いたので、僕は申し訳程度にマヨネーズを絞る。
ようやく満足そうに陽人は食べ始めた。
(どんな食生活してんだよ。って人のこと言えないか。)
僕は苦笑しながらご飯に箸を伸ばした。
「サクライのご飯おいしいね。」
「作ったのはほとんどないけどな。」
僕の言葉に陽人は首を傾げる。
「作ってないの?じゃあこれ誰が作ったの?」
「んー…、店の人かな。」
「店の人とお友達なの?」
子どもの疑問は、素直な分単純で難しい。永遠に続きそうだ。
僕は話を変えた。
「ママのご飯もおいしいでしょ。」
陽人は、首を横に振った。
「だってママは魚と野菜ばかりだもん。僕はお肉が好きなのに。」「…そっか。」
僕はそれ以上何も言わなかった。
『栄養のバランスを考えて作ってるんだよ』という理由は、『何で?』攻撃によって、いとも簡単に崩れ落ちてしまうのは必至だった。
最初のコメントを投稿しよう!