彼女の人生、僕の決意

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ハンバーガーを食べ終え、ボーッとしながらポテトを口に運ぶ。 窓の外では会社員らしき男性が、暑さに顔をしかめながらスーツを着込み、携帯で何やら話しながら足早に通りすぎていく。 (暑いのにスーツ着てら。) 僕は自分の格好を確認する。 Tシャツにハーフパンツ、裸足にサンダル…。 憧れの定職会社員は、僕には無理なような気がする。 不意に背中にコツンと何かがあたった。 「申し訳ありません!大丈夫ですか?」 振り返ると店員が空いた席のテーブルを拭いていた。 僕の背中にあたったのは、整頓しようとして大きく引いたらしいイスだった。 「あ、大丈夫です。」 顔も見ずに軽く頭を下げると、僕は再び視線を窓に移した。 「…桜井くん?」 一瞬自分の名前を忘れ、他人事のように流したが、ふと気づき僕は振り向いた。 呼んだのは、さっきの店員だった。 よく見ると、その顔には見覚えがあった。 記憶が蘇り、心臓が忙しく活動し始めた。 あれは…中2のときだった。
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