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体育祭の時期だった。
その日は、出場する種目を決めていた。
運動全般において得意でなかった僕は、とくに興味もなく、白熱する同級生たちを客観的に眺めていた。
100M、400M、800M、15000M、障害物走…など出場者はどんどん決まっていった。
一人一種目は必ず出場しなくてはならないため、僕は綱引きに立候補した。
綱引きはいい。
ただ周りに合わせて引っ張ればいいという単純な競技のうえに、自分がどのくらいの力を出しているかなどわかりはしない。
そのうえ10人という大人数のため、たとえ負けても個人の責任は問われない。
僕にとっては非常に好都合な競技なのだ。
ところが、ここで思ってもみない不運が僕を襲った。
希望者が規定人数を超えた。
よって公平にジャンケンで決まることになった。
(おいおい。お前は走るのはそんなに遅くないだろう。譲れよ。)
(お前、確かバレー部だったな。運動能力は高いだろう。)
立候補した奴らを順番に見回した。
僕はジャンケンが弱かった。
嫌な予感は的中し、あろうことか綱引きのメンバーから外れてしまった。
僕は黒板に書かれた種目表を、おそるおそる見た。
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