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その後も、僕の意思とは裏腹に協議はすすんだ。
(このまま何も当たらずに終われ!)
心の中で何度願っただろう。
「桜井。お前まだ決まってないよな。」
この瞬間、僕の切なる願いは爆音とともに崩れ去った。
「2人3脚しかないから決定な。」
力なく頷くしかなかった。
(パートナーは誰だろ。)
黒板を見て、僕は思わず立ち上がった。
(『秋吉』って女子だろお!!)
秋吉美月。学年トップクラスの美貌をもつ彼女は、恋愛にあまり興味をもたない僕でも綺麗だと思った。
彼女を好きだという男子は多く、彼女はその中の誰一人として選ぶことはなかった。
秋吉が僕と2人3脚にでるということで、僕は男子の羨望の的となった。
廊下で他の学年や他のクラスの人からも
「美月ちゃんのパートナーって今の奴だってよ。」
なんて、よくすれ違ったあとで振り返られることも、少なくなかった。
地味で目立たない僕は、一躍時の人となった。
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