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「私、17才のとき妊娠しちゃって。18才で子ども産んだの。まだ高校生だったから、中退して、親とも喧嘩ばっかだった。」
僕はコーヒーを飲むのも忘れて秋吉の話を聞いた。
「相手の人は大学生で。つきあって1年くらいだったんだけど、妊娠したこと話したら怖くなったみたいで逃げちゃった。」
「ひどいや…。」
「でしょ。産まれて少しは実家でお世話になったんだけど、やっぱりうまくいかなくてさ。今は陽人と二人でアパートに住んでる。お父さんが、まだ許してくれてないんだ。あ、でもお母さんはたまに様子みにきてくれたり、差し入れしてくれたりするんだ。やっぱ母親なんだよねぇ。」
秋吉はそこで少し笑って、コーヒーを一口飲んだ。
そして三本目の煙草を取り出して火をつけた。
何と言っていいのか、言葉が見つからなかった。
僕が秋吉と中学校を卒業したあと、彼女は激動の人生を過ごしていたのだ。
何の目的もなく、ダラダラと過ごした僕の時間と、長さが全く同じだなんて、とても申し訳ないと思った。
「引いたでしょ、ごめんね。私はどうしようもなく生きてきたんだ。でもね。一つだけ間違ってないことがあるの。子どもを堕ろさなかったこと。勝手な自己満足かもしれないけど、一つの生命を守ったことだけは、恥ずかしくないって思えるんだよ。」
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