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僕は地元の声援を背中にうけ、国会議事堂の議場へ。
テレビで見たことのある風景が広がる。
目指す場所は意外と遠く、先輩議員達からも
「がんばれよ」
「君には期待してるよ」
などと背中を叩かれながら、僕は台の前に立つ。
周りを見渡すと、一斉に視線が集中しているのが、はっきりとわかった。緊張で震える手を無理に動かし、質問書を高々と掲げて読みあげる…
「あれっ?」
質問書のはずなのに文字一つない白紙。
状況を理解するには少し時間がかかった。
冷や汗が流れる。
脈拍数が一気にあがる。
こちらを向いている政治家達の視線が一層強くなる。
(おちつけ…。)
僕は何も書かれていない紙を丸めてポケットへ隠す。
そして深呼吸。
マイクへ手を伸ばし、言葉を発しようとした瞬間、聞き覚えのある音楽が流れる。
(やべっ。これって僕の携帯じゃんっ?!電源入れっぱなし?!)
ざわつく議場の光景を最後に僕の意識は遠ざかった。
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