僕の子育て戦争デイズ

2/16
前へ
/96ページ
次へ
「木原さん、お願いがあるんですけど。」 木原さんは僕を見てニヤリと笑った。 「珍しいな。」 木原さんは僕より半年前からバイトをしている先輩だ。 僕たちは、普段、仕事の話以外、ほとんど会話をしない。 木原さんから飲みに誘われたことは何度かあったが、僕は行かなかった。 そんな僕が声をかけたことは、木原さんにとっては、さぞ驚きの出来事だっただろう。 「夜勤なんですけど、シフトから僕を外してもらえませんか?日中は毎日でもやりますから。」 木原さんは、砂利の入った大きな袋を担いだ。 「…彼女でもできたか。」 僕も袋を担いで木原さんの隣を歩く。 「そんなんじゃないです。」 ここの現場監督は、『手を止めるな!』が口癖で、周囲を見回しては怒鳴り声を上げる。 だから僕たちは、話をしながらでも動いた。 「ま、別にいいけどよ。お前にも少しは積極性が出てきた証拠だろうよ。」 「…すみません。」 木原さんは、袋の中身を大きな穴の中に入れた。 「謝ることなんかねぇ。どうせ俺は暇だからな。代わってやるよ。そのかわり…。」
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

596人が本棚に入れています
本棚に追加