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「…サクライは、僕のパパなの?」
ご飯を食べ終えてテレビを見ていると、不意に陽人が言った。
子どもの質問は、核心をついてくるので本気で慌てる。
「いや、…僕は、ママの友達なだけだよ。」
「じゃあ僕のパパはだれ?」
「…いやあ、その…。わかんない…。」
それを境に、陽人が突然不機嫌になった。
保育園の鞄を投げつけたり、中のものを全部出して投げたり…。
最後は床に転がって泣きわめいた。
(どうすんだよ。どうしろってんだよ。)
ジュースを与えてみた。
お菓子も目の前に置いてみた。
おもちゃも動かしてみた。
一向に泣きやむ気配はない。
(まいったな…。)
狂ったように泣く陽人を目の前に、僕はただ呆然とするしかなかった。
世の中の子を持つ親は、こんなときどうしてるんだ。
「そうだ!」
抱っこという名案を思いついて、陽人の体に触れた僕の手は、瞬時にして払い除けられた。
「はぁ~…。」
最後の砦を破壊された僕は、その場に座り込み頭を抱えた。
そのうち陽人の泣き声に変化が現れた。
だんだん力なく、そして囁くように、やがて止まった。
「…寝た…。」
僕は陽人を完全に寝入ったのを確認して、こっそりと抱き上げ布団に寝せた。
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