冴えない僕と夢と妄想

5/7
前へ
/96ページ
次へ
日中は仕事に励み、上司からは 「君さえいれば会社の未来は明るいよ」 などと言われ、後輩からは、 「先輩は自分の憧れっす」 なんて尊敬の眼差しで見られる。 残業が終わって家に帰ると、同棲している彼女が、僕の帰りを待っていてくれる。 「お疲れ様」 なんて言いながら、すぐに味噌汁を温めて、おかずの鍋を火にかける。 部屋中に漂ったいい匂いを身体中に浴びながら、僕は缶ビールを飲む。 「同期の奴が失敗したプロジェクトを俺が引き受けることになってさ。」 なんてデキる男の愚痴なんて言ってみたり。 彼女はそんな愚痴を全部聞いてくれて、缶ビールが空になる頃には、さりげなく新しいのを冷蔵庫から出してくれたりなんかして。 しばらくそんな生活をしたあとで、二人はめでたく結婚する。 これは全て僕の憧れであり妄想だ。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

596人が本棚に入れています
本棚に追加