その一

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高校三年のときに家出。そして上京。もちろん行くあてもなく、毎日見知らぬ機械の街をさまよった。金は親の通帳から抜き取った。少しずつ使っていたが、その僅かな金もそこを尽き…   そして、僕の考えは間違った方向に向かっていった。     『あそこのババァ1人暮らしの家にしよう……』     ポケットには折りたたみ式のナイフを仕込み、古びた戸を叩いた。     あのときはもう完全に頭がイカれていたんだ。     『ごめんください。道を聞きたいんですが。』   中からは50代くらいの女性が出てきた。少しくたびれた着物を身につけていて、生活の様子がうかがえた。   その女性は玄関まで出てきて僕の顔を見た瞬間、目を丸くしてこう言った。   『あきお!!』   事態は思いもよらぬ方向へと進んだ。僕はびっくりしてこのあと考えていた行動を忘れてしまった。   このババァ誰かと勘違いしてるな…   だがそのおかげで家の中にまで入ることができた。相手も完全に気を許している。これで仕事もしやすくなるぞ…       と、そのときは思っていたのに…。
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