その一

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『まさかあきおがもどってきてくれるなんてね。私は本当にうれしいよ。』   こいつは自分の息子と勘違いしてるみたいだなぁ…   『そろそろご飯にしましょう。お腹空いてるでしょ。』   『あっ、あぁ。もう腹ぺこだ。』   このまま息子のフリをして、スキをみてやるしかない…     ・・・。     『もうこんな時間ね。今日は遅いからもう寝なさい。』   『わかった。おやすみ。』   『おやすみ。』   よし、今しかない。後ろから近づいて大声を出されないようにいっきにいかなくては…   そう思って僕はポケットに手をいれいつでもナイフをとり出せるよう準備をした。   あと1,2メートルというところまで近づいて、ナイフを突き立てようとしたその時…   『あきお…』   びっくりしてナイフをとっさにしまった。   『今夜は冷えるから風邪ひかないようにちゃんと毛布をかけて寝るのよ。あとちゃんと歯磨きもしなきゃだめよ。』   『あっ、うん。わかったよ。うん、じゃあおやすみ。』   なんだこの気持ちは。今まで感じたことのない気持ちだ。あたたかい…       そのとき、僕の中にあった悪は弱くなり、心の中の何かが熱くなっていくのを感じた。
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