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この日本国陸軍第二十一普通科連隊は150人編成の中隊二つで連隊一つとして成り立っている。
つまり20人程度の小隊が14小隊あるのだが、このうち第一から第五小隊までがいわゆる特殊部隊と呼ばれるもので、第六小隊以降は通常の普通科の編成となっている。
このような風変わりな編成となっているのは、この第二十一普通科連隊の発足時、普通科の皮を被った特殊部隊としての運用を想定していたかららしい。
その後色々あり、今のような名実共に普通科となった後も、特殊部隊を擁し、そして第五小隊が殊更に特殊な性格の部隊であることは変わらなかった。
ゴースト連隊。
第五小隊は、そう呼ばれる特殊部隊のうちの一つだった。
ゴースト連隊は、全国から選りすぐられた精鋭から成る、少数精鋭のエリート集団であり、簡潔に言えば国家の飼い犬だった。
通常なら平和協調路線の民主国家の軍隊など出動させられないようなこと…例えば暗殺任務や破壊工作のような“不幸な事故”の演出など。場合によっては海外任務にも就く。…をこなすような部隊だった。
故にゴースト連隊は連隊として存在しながら連隊ではなかった。
運用の都合上、5人で一小隊として全国に分散して配備される、まさに幽霊部隊だった。
「隊長、今夜辺り、一杯、どうです?」
井上がニヤつきながら手で杯を煽るジェスチャーをする。
「先輩、まだ仕事始まってもないのに気ぃ早すぎですよー」
加藤がすかさずツッコミを入れる。
オフィスに笑いが起こった。
犬神はこの連中が好きだった。
職務上、いつ死んでも不思議じゃないこの男達を、犬神は家族のように感じていた。
犬神に残された、最後の砦のようなものだった。
「そうだな。久々に、悪くないかもな。」
犬神も笑みを浮かべながらそう答える。
「隊長まで朝っぱらから何言ってるんですかー…じゃあ俺も行こうかな?」
再びオフィスが笑いに包まれた。
ここにいる誰もが人を何人も殺めていることなど、微塵も感じさせなかった。
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