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なんという様だ、と男は自らを嘲笑った。
かつては人狼と呼ばれ、恐れられ、そして崇められたモノの末路がこれか。
滑稽だ。
笑える冗談だ。
仰向けに倒れた体で頭を右に傾けると、ほんのさっきまで自分だった左腕が転がっているのが見えた。
あの腕で何人の首をへし折ってきただろう。
少し視線を手前に移すと、人差し指と中指の千切れた右手が見えた。
この手で何度引き金を絞ってきただろう。
男は視線を正面に広がる空に移した。
暗い灰色に染まった空が男を覆っている。
男の体までも灰色に染まっていく感覚を覚えていた。
この体で、どれだけの人間を殺めてきたのだろう。
薄れ行く意識と五感の中で、男は追憶の海へと沈んで行った。
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