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しばらく目を閉じて椅子に身を委ねた後、ふと気になって山口の見ていたファイルに目を遣った。
七年も前の報告書録だった。
いったい何を調べていたのだろう、と犬神は思った。
思えば、最近の山口は勤務が終わった後も残っている事が多かった。
この第五小隊はバリバリの実働部隊で、デスクワークを専門とするような内勤の部隊ではない。
あまり表沙汰には出来ないような荒事もこなす部隊だ。
そんな部隊の人間がいったい何を、と思ったが、そこで止めた。
ドアが開き他の隊員と共に山口が帰ってきたのだ。
「あ、おはようございます、隊長。今そこで山口と出くわしたんですわ。」
そう言いながら犬神のデスクにコーヒーのカップを置いたのは山口ではなく井上軍曹だった。
井上 彰。
少し太めの体格の33歳。
この小隊の最年長者だ。
ちなみに離婚歴がある。
朝は早く、犬神の次に来るのはだいたい井上だった。
「今日は珍しく山口の奴が早いですなぁ。調べものとか言っとりましたけど、何か聞きましたか?」
「いや、何も聞いてない。何か昔の件について調べているようだが…何も言ってこないということは何もないのだろう。」
「はぁ。まぁそうですかね。」
そう言うと井上も自分のデスクに着き、朝食を摂りはじめた。
見ると、山口はまた別のファイルを開いていた。
犬神はカップを手に取ると、熱いコーヒーに口を付けた。
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