第五小隊。

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時計の針が八時に近付くにつれて、他の隊員も出勤してきた。 次に来たのは、眼鏡をかけた、一見サラリーマン風の男だった。 谷池 修也。 階級は曹長。 犬神と同期で30歳だが、未だに独身だった。 犬神とは軍に入る前からの付き合いだった。 「おはようございます。」 谷池は、常に敬語を使う律儀な男だった。 それは、例えば階級も年齢も下の山口に対しても同様だった。 谷池は書類鞄をデスクに置き、そこから大きな封筒を出すと、 「ちょっと事務まで行ってきますね。」 そう言って直ぐにオフィスを出て行ってしまった。 最後に出勤してきたのが加藤伍長だった。 加藤 浩輔。 階級は伍長で、27歳、独身。 軍人らしくない後ろで纏めた長い髪がトレードマークの偉丈夫だった。 ちなみにこの髪は軍規に違反しているのだが、あまりその辺りをうるさく言う人間はこの基地にはいなかった。 「おはようございぁっす。お?今日は谷池曹長がまだですか?」 「んな訳ねぇだろが。さっき事務に用があるってんで出て行ったんだよ。」 「そっすか。ってことは今日も俺がトリってことですな!?」 何故か加藤が嬉しそうに言う。 「意味がわからねぇよ。鳥なのは頭の中身だけで十分だバカ。」 井上と加藤がそんなやりとりを交わしてるうちに、谷池が帰ってきた。 「あ、加藤君、おはよう。」 「おはようございます、谷池曹長。」 第五小隊はこれで全員だった。 通常なら分隊にも満たない人数なのだが、この第五小隊というのは非常に特殊な部隊だった。
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