気持ちの共有

3/9
前へ
/9ページ
次へ
「由慧兄、おはよー!」   「…おはよう、蛍焔(けいか)」   朝からテンションが高めな蛍焔に、由慧は少々面食らいながらそう返す   伊倉蛍焔(いくら・けいか)は由慧の隣りに住んでいる幼馴染みの中学二年生だ 元々二人の母親同士の仲が良くて、年は離れていたが二人は幼い頃からよく遊んでいた 由慧は蛍焔のことを妹のように可愛がっているし、蛍焔も由慧を本当の兄のように慕っている   しかし、今は昔とは違う感情が互いに芽生えている それを実感し始めたのはいつの頃だったのか、と由慧が少し思い出していると蛍焔が由慧に歩み寄る   「ところで由慧兄、まーた朝帰りぃ? 夜中の三時くらいに由慧兄の家のガレージの開閉音が聞こえたよー。今度小父さん達から連絡があったら言っちゃおっかなぁー?」   蛍焔は茶化すようにそう言って由慧の腰に抱きついて、由慧の穿いているジーンズに顔を押し付ける   余談だが、由慧の両親は父親の仕事の都合で今は別に住んでいる   「…あのなぁ、仕方ないだろう? 大学生は忙しいんだよ。中学生と一緒にしない」   由慧はそんな蛍焔をしっかりと受け止め、蛍焔の頭を優しく撫でながら携帯電話のメールをチェックする さして目ぼしい内容は見当たらないので、ベッドにポンと携帯電話を無造作に置く   そして、由慧は蛍焔を優しく腰から引き剥がすと眼鏡を掛けて黒の開襟シャツを羽織る ふと由慧が蛍焔の方を見ると、蛍焔は由慧のベッドに腰掛けて自分の携帯電話を弄っている   そんな蛍焔を見ながら由慧は煙草を灰皿に押し付ける
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加