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「…おい、蛍焔。お前…学校は?」
由慧はそう言いながら部屋の時計で時刻を確認する
今は八時三十五分を指している
今日は平日な上に、もうとっくに中学校の始業時間を回っている
だが、話の内容とは裏腹に由慧の口調は冷めている
ただ義務のように事務的に
「んー? あー。今日は創立記念日だから休みだよ。そう言う由慧兄は?」
携帯電話をスカートのポケットに入れながら、蛍焔は特に気にする様子も無く軽い口調でそう答える
そして、そのままの調子で由慧の予定を聞く
「…今日は休講だから、まぁ休みだ。それで、水姫(みずき)さんは家に居るか?」
「母さん? まだ事務所から帰って来てないよ。確か…今日の朝の便で南プロヴァンスに行くんだ、って一週間くらい前から言ってたよ。由慧兄、知らなかったの?」
水姫とは蛍焔の母親…つまり、由慧の母親の親友だ
ここ最近は仕事が忙しくてなかなか家に帰って来ない。だが、蛍焔自身は特に気にしている様子も無い
由慧は高校生の時から水姫の仕事の手伝いをしている
将来は水姫の下で働く気でいて、そのため水姫の事務所で目下研修兼バイトに励んでいる
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