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オレは野球部で外野を守ってる。
ある練習の日それは起きた。
一人だけ部室へ戻るとそこには、マネージャーがいた。
そしてマネージャーが口を開いた。
「私、今負けそうなの…」
意味深に彼女は言う。
オレは彼女に、
「いきなり何さ…?」
と聞き返した。
すると、
「針の穴に糸が通らないの。入れてくれない?」
は?なんて奴だ…。
「それくらい自分で入れろよ……。」
「無理。あなたに入れて欲しいの。それじゃなきゃあたし満足できない……。」
オレは意味もわからずただ適当に言葉を返した。
「自分で入れろって…。」
「できない!私にはできないの!あなたが穴にいれて!この糸太いの……。」
「変な妄想しちゃったじゃねーかよ……。」
「よく言うでしょ。登山家は『そこに山があるから登る』って。針穴家は『そこに穴があるから入れる』って……。」
「言うかボケッッ!!さっさと自分でやれよ!!」
ボクは怒鳴ってしまった。
すると彼女の目から涙が溢れてきた。
オレは女の子に泣かれると弱い。
オレは、後ろから抱きしめて、
「もう泣かないでおくれよ。オレが入れてやるから……」
「ホント!?ありがとう!」
数秒後……
「入れたよ。こんなの簡単じゃん……。」
「ありがとう!今度はあなたのを………あっ!何でもない……ありがとね。」
今度は何なのだろう!?
オレはそれからというもの、針の穴のみならず、たくさんの穴に糸をいれている。
裁縫の先生になったからね。あの日の穴はオレの一生の穴になっちゃったんだ。これからもいろんな穴を見ていきたいよ。
サナギ🎵
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