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「…何故,家を出たのですか。」
静まった車内。
祐真の声が響く。
『…何でアンタが知ってんの。』
「佐夾です。」
『さき兄か…』
祐真の言う通り,私は進宮家を出た。
理由は,単純。
「看護師になる事を反対されたからですか。」
『…分かってんじゃん。』
父,進宮相馬に看護師になることを反対された。
昔から私を可愛がってくれて,何でも協力してくれた父が,初めて拒んだ。
「我が儘。」
『分かってるわよ。でも,どうしても諦められなかったの。』
小さい頃からの夢だった。
そう簡単に諦めてたまるもんですか。
「…相馬さんは貴女に会社を継いで欲しいのではないんですか。」
『SMC(進宮メディカルコンツェルンの略)を?さき兄やうき兄がいるじゃない。』
「……………そうですね。」
『何よその間は。』
SMCを継ぐ気は全くない。
さき兄やうき兄,つき姉とふう姉がいるじゃない。
私みたいなのには,継ぐべきではないんだ。
『榮皆(サカミナ)高校の看護科は5年一貫よ。看護師になる近道。私はこのチャンスを逃さない。』
父様には悪いけど,私は絶対看護師になる!
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