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「さっきの人,何だったのかしらね。」
ついでにおはよう,と言いながら私の前の席に着いたのは相川鏡子(アイカワ キョウコ)
真っ黒な短い髪。整った顔。いかにも和風が似合うお姉さま。
「真っ黒なスーツに真っ赤なネクタイ!華鳥ったら怖い人に目をつけられたね!」
あ,おはよー!なんて言って鏡子の膝の上に座るのは香月こころ(カツキ ココロ)
童顔に少し赤毛で長い髪は天然パーマによってクルクル。
二人とも,同じ夢を目指す素敵な友達。
『アレ,知り合い。』
「「へ?」」
『だから,アイツ。真っ黒なスーツに真っ赤なネクタイした怖いオッサン。知り合い。』
「…へぇ。」
「そうなんだぁ。」
この二人は私の正体を知っている。
私の名前は進宮華鳥。日本最大の医療会社らしい財閥さんの末娘。
早瀬,は偽名。進宮なんて名乗ったらすぐバレてしまいそう。
「何処の人?」
「やっぱりお金持ち!?」
『イタリアのマフィア。』
「…へぇ。」
「そうなんだぁ。」
この二人には感謝してる。
いくら驚いても,決して声を荒げたりしない。
一瞬,目を見開いて言葉を詰まらせるだけ。
「…で,そのマフィアさんが華鳥に何の用なの?」
『分からない。』
そう,分からない。
あの男は私に用事を作らない。
あの男は,私を苛めることしか考えなかった奴なのだから!
『…さき兄に電話してくる。』
「せめてHRが終わってからにすれば?」
「その後の言い訳は任せて!」
教室の時計を見れば,もうすぐ朝のHRが始まってしまう時間。
…HRが終わってからでも,遅くはないかな。
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