10人が本棚に入れています
本棚に追加
月日は流れ、一週間後。
日も暮れた午後七時、夜桜を煌々照らしながら、祭りが始まった。
病院の庭で行なわれているため大きなものではないが、けれどその賑わいは確かに、粉う事無く、祭りのそれだった。
「うわぁ……これは、凄いな」
その光景に、感嘆の声を上げる月都。
もっと閑散としたものを想像していただけに、この光景には驚きを隠せなかった。
「ね、茜はどう思う……って、聞くまでもないか」
「…………ふわぁ」
感嘆とも、驚嘆ともとれる息を吐きながら、目をきらきらさせて辺りを眺める茜。
今までの彼女を知る人ならば、その光景は間違いなく、異常に映っただろう。
茜がこれほど素直に感情を表せるようになったのは、疑い様もなく、違え様もなく、真実、月都の積極的なコミュニケーションによるものだろう。
「去年までは、こういうお祭りってなかったの?」
しっかりと、目を逸らさずに、けれど優しく、とても優しく、問い掛ける月都。
そんな彼が相手だから、茜も素直に、怯える事無く、返事をすることができた。
「んと……あった、けど。来たことなかったから」
やっぱりどこかぎこちなく、問い掛けに答える茜。
綺麗な、長い黒髪も相まって、大人っぽい雰囲気を持つ茜だったが、見せる表情や紡ぐ言動はとても幼くて、そのアンバランスさがとても可愛くて、月都は好きだった。
「――ん、そっか。じゃあ、今日は沢山楽しまなきゃね」
にこっ、と笑う月都に、茜はちょこっとだけ悩んで。
「……うんっ」
ちょこん、と小さく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!