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「あ、金魚すくいがあるよ、茜」
屋台を指差しながら、そう告げる月都。
その表情は満面の笑みだが、しかし彼の心の中には一抹の不安があった。
何しろ、茜は心臓の病を患っているのだ。無理させるわけにはいくまい。
とはいえ、そんな憂いなどおくびにも出さずに月都は優しく笑う。
「どう?やってみない?」
ポケットから財布を取出しながら聞く月都。
金魚すくいの値段は一回百円。
病院主催だからか、随分と良心的な価格である。
「ん……やってみたい」
うずうずとしながら、屋台に小走りな茜。
そんな彼女の後ろ姿を見て、笑みを隠しきれない月都。
ともすれば今まで見てきた中で一番楽しそうな茜に、月都はどうしようもない安らぎと喜びを感じたのだった。
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