白い少女と優しい少年

6/7
前へ
/7ページ
次へ
白い、白い部屋は、少しずつ、本当に僅かにではあるが、変化を見せ始めていた。 それは、部屋の主である茜の変化に伴ってか。 段々と、白い部屋には色彩が感じられるようになってきた。 その部屋で、自分の成長の証の中で、茜は小さく、怯えるように、問い掛けた。 自分を、成長させてくれた人に。 白い部屋に、色をくれた人に。 明日退院してしまう、愛しい人に。 小さく、本当に小さく、消えてしまいそうなほど小さく、蜃気楼みたいに不安そうに、待春茜は網風月都に問い掛けた。 「――明日も、来てくれる?」 言葉足らずな、茜の祈り。 明日退院してしまっても、自分の元を訪れてくれるのか、と。 そんな、限りなく無意味な……月都にとっては本当に無意味な問い掛け。 そんな事、今更問われるまでもない。 「あのね、当たり前でしょ。好きな女の子に会いにくるのは、当然じゃないか」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加