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しれっと、けれど優しく、しかしさらりと爆弾発言をする月都。
『好き』という言葉は嬉しいけど、茜はそれに驚かなかった。
だって、知ってたから。
それに多分、相手も自分の気持ちを知っていてくれてるから。
だから、そんな大前提を無視して、茜は問い掛ける。
「でも、私……多分、近いうちに死んじゃうんだよ?いつか、きっと、死んじゃうんだよ?いなくなっちゃうんだよ?」
不器用に、けれど一生懸命に、必死に、必死に言葉を重ねる茜。
そんな、茜の不安そのものを、『私と会っていたら、近いうちに悲しい思いをする』という懸念そのものを、しかし月都は、たった一言で無視した。
「……良いんだよ、そんなの」
そうして、やっぱり優しく笑って、彼は自分の腕で茜の頭を抱えた。
ゆっくりと頭を撫でながら、彼は言う。
「そりゃ、いつかは会えなくなるかもしれない。それは、他の人たちより早いお別れかもしれない」
その言葉に、びくりと肩を震わせる茜。
けれど、そんな彼女を安心させるように、月都はぎゅっと力を込めて。
「でも、どれだけ早いお別れでもさ。明日よりは、早くないんじゃない?」
「あ……」
僕はいつかくるお別れよりも、明日会えないほうが悲しいな、と。
そうやって、網風月都は待春茜を受け入れた。
――その後、ちょっぴり悪戯っぽく笑って。
「もしかして……迷惑?」
そうやって、いつかのように問い掛けた。
問い掛けに、茜はちょっとだけ悩んで。
「ううん……嬉しい」
やっぱりいつかのように、笑った。
けれどそこに、いつかのようなぎこちなさはなくて。
その、綺麗な笑顔が……きっと、二人が一緒にいたという証になるのだろう……
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