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千倉、ごめんな。
俺はお前を困らせてばっかだった。
傷付けてばっかだった。
もしかしたらもっと正しいやり方や方法が他にあったかもしれない。
誰も傷付けずに済む選択が他にあったかもしれない。
でも俺はバカだから。
他のやり方が思い付かなかった。
(あんな顔してほしいんじゃ、ないのに)
最近見た千倉の顔は泣き顔ばかりだった。
それは全て、自分のせいで。
それがただただ苦しかった。
困らせたかったんじゃない。
傷付けたかったんじゃない。
俺は――――……
鮮やかな記憶が蘇る。
偶然出会えた、あの日。
『変なやつ』
初めて千倉の笑顔を見た、あの日。
ああそうか、俺は。
多分あの瞬間から。
千倉に、恋をしていた。
だから大樹に嫉妬して。
楓ちゃんに心配かけて。
千倉に八つ当たりして。
あの時あれだけ自分を振り回していた感情の答えは。
笑っちまうほど簡単だった。
力が抜けていく左手に暖かい体温を感じながら。
深くて暗い闇に、意識は溶けていった。
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