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でもそんなの全部関係なく、ただ会いたいという気持ちも確かにあって。
理性と本能がせめぎ合う。
答えられずに黙っている俺の気持ちを察したのか。
大樹は溜め息混じりにパイプ椅子から立ち上がった。
「分かった、俺から雨宮に連絡しとく」
「大樹……」
「起きたばっかであんま頭使うな。いいから今日は寝てろ」
「……サンキュ」
それに応えるように、大樹は肩越しに手を振った。
しかしドアを開く寸前にピタリと立ち止まり、首だけでこちらを振り返る。
「言い忘れてたけど」
「ん?」
「その花瓶の花、千倉が持ってきて活けたやつだから」
「!」
それだけを言い残し、今度こそ大樹は病室から出て行った。
「……最後に爆弾投下してくんじゃねぇっつうの」
右手で目を覆い、深く息をつく。
少しだけ頬が熱い気がした。
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