最終章《生きてこそ》

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ハルはいま、少しも後悔していないわけではない。 自分が犯した罪を償うように、一生懸命生きている。 心から愛した人の命の重さを、切に感じながら……。 いまでも陽介と歩いた道のりは、決して正しかったとは言えないし、 《運命》の一言で片付けられるような、そんな単純なものでもない。 不倫の結末はやはり、なにかしらの罰を神の手によりくだされる。 軽いか重いのかは、それぞれの感じ方で異なるだろう。 不倫の果てに、本当に幸せになれるカップルは、 もしかしたらゼロに等しいのかもしれない。 何故ならそれは、犠牲の上に成り立つ関係だからだ。 ハルと陽介のような、過酷で残酷な運命を辿るカップルもまた、少数かもしれないが、 人の命までも奪う可能性がゼロではないということを忘れずに、 そして一生背負って生きる覚悟の上で、不倫関係を続けるべきである。 いま現在、そんな関係を続ける人たちへ……。 不純な恋は錯覚から始まり、 愛されているという錯覚の中、彷徨い続ける。 ハルもまた、その中の一人だったにすぎない。 錯覚から目覚める時、 その愛さえ錯覚だったと思えるような素敵な恋人に出逢い、 本当の愛を手に入れられることを心から祈り、 これを以て完結と致します。
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