はじまりはいつも突然に

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ラテは適当にキッチンからパンを取り袋に詰め込むと家を出た。 家の裏庭から森を抜けると兄と僕だけの秘密の場所がある。 崖の手前が少し開いていて野原になっている。 野原には1つ大きな平べったい石がありそこに座って見る景色は最高だ。 遠くに見える海。 その手前にある白いお城。 すべてを手に入れた気分になる。 お兄ちゃんはどんな気持ちであの景色を見ていたんだろう。 兄には他にもいろいろなことを教わった。 毎年美味しい木の実をつける木。 空を飛ぶ鳥の名前。 動物の捕まえ方。 どれもこれも鮮明に思い出せる。   兄がいなくなってもう1年もたつのに――。
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