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結局言えない。
私が黙っているとますますアイツは困った顔になる。
「…ぷっ、はははは~」
突然彼女は笑いだした。
「何がそんなに可笑しいんだ。」
「ああ可笑しい。だって棄てられた子犬みたいな顔なんだもん。
久しぶりに笑ったわ」
彼女は笑いながらセリフを言う。
「あなた面白いわね。ところで音楽室に何しに来たの?」
俺も昔を思い出しながら彼女に言う。
「ピアノは弾けないけど聞きに来たんだよ。
はははは、懐かしいね」
ほんの1ヶ月ちょっと前なのに懐かしい気がする。
いろいろあったから。
いろいろ楽しい事があったから。
そして、あなたは、私に楽しむ事を教えてくれた。
本当にありがとう!
私、決めたよ!
「う~ん、なんでもないよ。もう良いの」
「そっか」
「うん!」
私はまた放課後に音楽室でピアノを弾く。
そして、ピアノの横にはアイツがいる。
アイツはいつもと同じように静かに聴いてくれる。
「私卒業したらパリに行く事にしたわ」
「知ってる」
「知ってたんだ」
「ああ。知ってたよ。向こうでピアノ楽しんでこいよ」
「ええ、楽しむ。そして、プロになるから」
「なら俺も雀士(麻雀のプロ)になるよ」
「ははは、立派な雀士になってね」
「ああ君みたいに強くなるよ」
数日後
今日は先生と日本で最後のデート。
パリに行く事を話したら、じゃあ最後にデートをしようと誘われ映画を見る事になった。
映画は少女が恋をした男性が病気で死んでしまう悲しい話し。
そうアイツと見た映画。
映画を見終えて先生は目頭を熱くしながら私に問い掛けた。
「なぁ主人公の女の子は、いろいろあった上に彼氏が病気で死んだりして、すごく辛い話しだったね。
でも、あんなに真っすぐな恋ってできるんだね」
私も、あの時には主人公の彼女が辛いのに何故あんなに真っすぐに恋ができたんだろうと思った。
けど、今なら彼女の気持ちが分かる。
彼女は真っすぐとか後悔とか考えないで目の前の事に全力で向き合って走っただけ。
たまたま、それが病気の彼氏で恋だったんだ。
私も今はピアノに全力で向き合って走って楽しむ事に決めた今だから、分かる!
本当に彼との時間を楽しんだ彼女は辛くないと思うし後悔なんかしていないって事が。
「先生はそう思うんですね。
私は彼女は幸せだったと思いますよ。
後悔なんかしていないし辛いなんて思ってないと思います」
「…!?」
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