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第13曲「L'escalier du diable 悪魔の階段」
♪~♭♪
比類無いくらいアクロバティックでダイナミックなピアノの音色が夕方の音楽室を占領し、廊下までを配下にすべくごぼれおちていた。
「最近この時間になるとピアノの音がするよなぁ。ちょっと覗いて見ないか?」
「え~面倒だよ。興味ないし、それより来月の麻雀大会の打ち合わせしようぜ」
「お前は部活の事ばっかだなぁ。
とりあえず、覗いて見ようや。
気になって仕方ないからさ」
「わかったよ。付き合うよ。その代わり直ぐに打ち合わせだぞ」
「はいはい。仰せの通り」(笑)
僕達はピアノの音色に導かれるかの様に、音楽室へと向かった。
「バレない様にそっと開けろよ」
僕は興味も無かったが、舞う様なそれでいて重みのある音色に圧倒され、注意する事なく扉を開けてしまった。
扉には
【故障中開けるな!】
と書いて有ったのに…
ガラガラ…
扉は半分、開き掛かった時点で前乗りに倒れていった。
その時は確かに時間がスローになってたと思う。
だって、僕は扉の向こうでピアノを弾いている女子の顔が驚きの表情になる様子を見る事ができたのだから。
ガシャーン!!
想像以上の音を立てて扉が倒れ、取り付けられていたガラスが割れ床に広がる。
「あ、あなた達何やってんの!」
女子の声も想像以上に可愛いく美しかった。
多分この時点で僕は彼女に恋してしまったのだろう。
僕はとっさに彼女の手をとり
「ヤバいから、逃げるぞ!」
と言って彼女と廊下へ。
そして、もっと遠くへと駆け出した。
彼女も楽譜を片手に僕に手を引かれながら後を追う。
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