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なんとか校舎の反対側まで逃げる事ができた。
「ねえ。なんで私まで逃げないといけないの」
「なんでって…」
「ごめん。なんも考えて無かった」
僕は自分のあやまちにシュンとなる。
「…ぷっ!はははは~」
それを見ると突然女子は笑いだした。
「何がそんなに可笑しいんだ」
「ああ可笑しい。だって棄てられた子犬みたいな顔なんだもん」
棄てられた子犬かよ。
「久々に笑ったわ。しかし、あなた面白いわね。私は水城(ミズキ)あなたの名前は?」
「僕は恭平(キョウヘイ)」
「ところで恭平君は音楽室に何しに来たの?」
友達の付き添い。
なんて言えないし、音楽の事なんか全然解らないし…
「ピアノ…」
「ピアノの弾きに来たのね」
「ピアノが上手かったから、聞きに来ただけだよ。
それから、僕はピアノとか弾けないから」
「そっか。弾けないのか。
一緒に弾けたら楽しそうだと思ったんだけどな」
え!僕と一緒に…
でも音楽の才能なんか無いよ。有るのは麻雀くらいだよ。
「ゴメン。ところでまたピアノを聞きに来ていいかなぁ」
「え!私のピアノなんか面白くないわよ。
でもそれでも良いならどうぞ」
「ありがとう!」
「だけど、今度は扉を壊さないでね♪」
「ははは(笑)。扉は壊さないよ。今度は僕1人で行くから!?」
「?」
「アイツを残したままだった!」
次の日友達からさんざんイヤミや文句を言われ昼にジュースを奢らされた。
その日から僕は夕方になると音楽室に通う。
ピアノを聞くためでなく彼女と一緒に居たいから。
今の僕にはそれだけでもかなりの冒険だ。
今日も扉を壊したあの子が聴きに来てくれた。
てっきり最初だけかと思ってたのに。
本当にピアノが好きなのね。
でも、まだまだ満足な演奏が出来ていない。
明日はレッスンの日なのに。
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