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世界は不公平だと思う。街に溢れる…喧騒の数々…道を歩いていてたまたま肩が触れた相手が、柄の悪い輩だったら…因縁付けられて…めちゃくちゃに殴られて蹴られて…まるでぼろ雑巾のように扱われ、道端に放置される。
道行く他人は…面倒な事に首を突っ込む奴は居ないから…他人の振りで通り過ぎる。
それでも俺のそばに一つの影が近付いてきた。
そいつは真っ黒な格好でまるで死神を思わせた。
漆黒の長い髪を靡かせて…唇だけ妙に赤い不気味な奴だ。
しゃがみ込み…そいつは名刺を一枚俺に渡した。
「君は自分だけが不幸だとか不公平だと思っていないかい?そんな人間にしか…私の姿は見えない」
確かに周りの通り過ぎて行く人…は誰も奴の姿は見えていない。
俺はやっと起き上がりその名刺を受け取る。
真ん中に名前が書いてあるだけの肩書きは無しのシンプルなデザインだ。
「これ…何て読むんだよ?」
男は…人差し指を唇に添えながら名乗った。
「藏奉葵 夜昂(くらぶきやこう)…夜昂と呼んでくれるとありがたいです」
たどたどしい日本語に聞こえた…一瞬中国人かシナ人ぽく感じた。
「大丈夫ですか?血が出ていますよ?」
夜昂と名乗る男は俺に白いハンカチを差し出した。
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