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口の中に血の味を感じた。どこか切れてるらしい…差し出されたハンカチで口端を軽く拭う。どす黒赤い血がハンカチに染みる。
とにかく俺はその名刺を胡散臭さ気に見つめ…再び顔を上げると手を差し出され、何の躊躇いもなく握り返した。
「これでアナタも我々の仲間です」
久々に聞く言葉だった。俺は生まれて20数年そこそこでそれ程世の中の事をそう詳しく知ってる訳じゃないが、人並みにバカもやったし…経験も積んだ。
苦しい事も楽しい事もそれなりに味わった。
「仲間?…他にも俺みたいな奴居るのか?」
俺は夜昂に静かに聞くと…クスクス笑いながら言う。
「そうですね…アナタはまだ粋が良すぎますが、居ますよ」
「へぇ…そうなんだ夜昂さん仲間になると何か利点とかあるわけ?」
「アナタは今夜から…ヒーローになれます」
一瞬相手のセリフに目を点にさせた。
「は?…ヒーローってスーパーマンとかにしてくれるわけ?」
「信じる信じないはアナタ次第です…私の話を100%信じられますか?」
俺は…フラフラな体を壁に凭れさせて相手を見つめた。
「俺がヒーローになった証拠が見たいんだけどさ」
「それでしたら簡単です。そうですね…この空き缶を片手で普段握り潰せますか?」
「片手で…握り潰すのか?そりゃ幾ら何でも無理だろ?アルミ缶ならともかく…」
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