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眩しさに薄目を開けた。見慣れない顔がすぐ真上にまるで覗き込むように見つめる瞳と視線がぶつかった。
「気が付いたかね?君…名前を言えるかな?」
眼鏡を掛けたとても優しげな白衣を着た人が声を掛けた。
声音も柔らかく非常に耳へ心地良く響く。
「俺の名前?…あれ何だっけ」
俺は一瞬と言うか名前…すぐに出て来なかった。
いや…俺は誰だ?
手に何かを握っている。
カード?名刺…を大事そうに俺は握っていた。
「後遺症が残ってるのかな…君は昨夜路上で怪我を負って倒れて居たんですよ?覚えてませんか?」
医者だと気付いて自分の顔を手で触れながら俺は何とも言えない複雑な顔をしていたに違いない。
「困ったね…頭の打ち所が悪かったのかも知れないね。でも一時的にショックで思い出せないのかも知れないから…少し暫く入院して様子を見ましょう」
事務的な話を独り言のように言い…白衣を着た眼鏡の人は部屋を出て行った。
入れ替わりに…白衣を着た女性が現れて…俺の胸元に体温計を差し込み検温して記録を付けるとにっこりとしての部屋をやはり出て行った。
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