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────ポツ、ポツ
と、外では雨が降りだした。
家の中では相変わらずの雰囲気が漂っている。
8畳のリビングに、大型のTVに大型のソファー。姉貴が引っ越し祝いに親父に買ってもらった物だ。
そのTVとソファーの間には木製の長方形の机。いつものように机の上は雑誌が無造作に置かれている。
床には俺が畳んだばかりの洗濯物。
その2m程先に落ちている女性用下着や白いブラウスやらは、つい10分ほど前に帰ってきた姉貴のものだ。
姉貴はここでそれらを脱ぎ捨て、今シャワーを浴びている。
「もう少し女らしくしろよ……」
最近では口癖になっている言葉だ。
他の男から見たら羨ましいかもしれない話だが、家族の裸体ほど目の前にして萎える物は恐らくないだろう。
その姉貴は4月から会社に勤め始めた。
会社と言っても小さなもので、印刷会社とは名ばかりの実に面白い所だと姉貴はよく話す。
まぁあの姉貴の事だ。面白くなければ4ヶ月も同じ仕事が続かないだろうが。
そう思いながら俺は冷蔵庫からアイスコーヒーを手にとり、キッチンの戸棚(そう言えばこの戸棚も親父からの引っ越し祝いだった)から2人分のグラスを持ってきた。
姉貴の分も入れてやろうと思ったからだ。
まもなくして我が姉、上條流奈が風呂から出てきた。
鼻歌混じりで廊下を挟んだ正面のドアを開けた。どうやらトイレらしい。
「またあの格好かよ;」
一瞬見た姉貴は、
髪はボサボサ、下着は付けているものの、後はタオルを首から下げているだけだった。
夏だから暑いのもわからなくはないが。
「ふーっ。お疲れあたし!」
出て来た姉貴の第一声だった。
そして机の上に置いてある煎れたばかりのアイスコーヒーを、何も言わずに一気に飲み干す。
「ぷはーっ。お疲れ!」
何がお疲れなんだよ。と口に出す前に、姉貴は俺の分のアイスコーヒーまで飲みだした。
俺は諦めて冷蔵庫までアイスコーヒーを取りに行く。
「ふーっ。流亜あんた今日補習じゃないの?」
2杯目のアイスコーヒーを飲み干した姉貴が唐突に言った。
「3時からだっつーの。姉貴こそなんで帰って来たんだよ。会社は?」
「なんか社長が熱出したみたいでさ、昼から全員帰宅!面白い会社だろ」
何が面白いものか。会社の経営が心配になってくるよ。
「まぁいいけど。俺昼飯外で食べて来るからそのついでに補習行ってくる。
帰りは夕方ぐらいになるよ」
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