1184人が本棚に入れています
本棚に追加
「……………………」
レイミンは黙って2階の窓から深夜の街を見下ろしていた
魔法政府に最も近い街だけあって人通りが途絶える事は無いが、昼間とは見違える程に少ない
ナルはそんなレイミンと言葉を交わす事無く、机に座りコーヒーを啜る
会話は何度か試みた
しかし、レイミンからは何の反応も無かった
ルクの死を聞いてから、レイミンは一言も口にしていない
「ねぇレイミン。
コーヒー、早く飲まないと冷めちゃうよ?」
「………………」
「せっかく宿主さんが持って来てくれたんだから……
ね、ちょっとだけでもいいから。喉からからじゃない?」
レイミンはじっと動く気配が無い
こんな事を、ここ数日ナルはレイミンが起きてから寝るまでずっと続けていた
「……もう遅いね。夜中の2時だって」
時計に目をやり、すぐにレイミンへと視線を戻す
レイミンはのそっと立ち上がり、ベッドへと潜り込んだ
ナルは微笑み、レイミンの枕元まで向かう
そして壁を向くレイミンの頭を撫でていると、何やら扉の外が騒がしくなった
と言っても、声では無く足音のような音だ
それも大勢の
「……?」
不思議に思い扉を少し開けてみると、廊下の奥からエティを筆頭に数人の男女がやって来た
「エティさん?
ラクレスさん……あ、ル……ロアも」
ナルがルアと言わなかったのは、バルードで見た事のある人物を見つけたからだった
「悪かったなナル。レイミンは居るか?」
扉の淵を掴み、ラクレスがナルを見下ろした
「今横になった所です。あの…………」
ナルはちらとレダへ視線を送り、さらにその奥に立つクインダム、グダイへと困惑の表情を向けた
「レイミンに聞いて欲しい話があるの。中へ入れてくれないかしら?」
「あ、でも…………」
一旦顔を引っ込めた後、再び扉の外へ顔を出したナルは困ったようにエティを見た
「レイミン……ずっと元気なくて…………今日も……一言も……」
「……だ、そうだが?どうする?」
「ここまで来て帰るなんて出来ねぇだろ。なァレダ?」
レダは少し考え、ラクレスを見た
「すみません。私だけ中へ入れてもらえないでしょうか?」
「……俺達とあんたならいいだろう。後ろの2人には待っててもらう事になるが?」
クインダムは渋ったが、グダイは首を縦に振った
「……まぁいい。成長したレイミンの姿も見たいがひとまずお預けか」
最初のコメントを投稿しよう!