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クインダムはやれやれ、とわざとらしくため息を吐くと踵を返し、
「だがいつか必ず会いに来る」
とだけ告げて去って行った
「……バルードで待つ事にする。ネキスには上手くとりなしておこう」
「グダイ殿……
あなたに一番に話すと言う約束、守れずに申し訳ございません」
「……お前が意を決して自らの過去を話した。それで十分だ」
レダは静かに「はい……」と呟くと、グダイの背中が階段に消えるまでずっと立ち尽くしていた
「いい上司を持ったな」
「……はい」
「さ、入りましょう」
ナルが中へ引っ込むと、エティに続いて全員が室内へと入り、最後尾のラクレスが扉を閉めた
「……レ…………ミン……」
絞ったようなかすれ声だった
それでいて、レダの瞳はまるで輝きを取り戻したかのようだった
布団からちょこんと出たぼさぼさの赤髪は、レダの髪色とよく似ている
「やっと……っ…………」
口を結ぶロアはレダの目に涙を見た
「……これで終わりじゃないだろう?」
「話してくれないかしらレダさん」
2人の言葉に、レダは涙を拭いながら頷いた
「……レイ……ミン……
わかるかな……私のこと……」
呼び掛けるが、レイミンが動く気配は無い
「私は……あなたと数年間過ごしたんだけど……
無理もないね、あんなに小さかったから……
……本当の……母親じゃないしね…………
でも――――大きくなったねレイミン」
涙ながらの笑顔だったが、どこか痛々しいものを感じる微笑みだった
「……レイミン?」
ナルがその名を口にしたのは、彼女がむくりと起き上がったからだ
「…………お母さんを……知ってるんですか?」
窓に目をやり背を向けたままだったが、その声を聞いたのはナルでさえ数日ぶりの事だった
「え、えぇ……
それどころか、私はあなたのお父さんも知っている……
私は、あなたのお父さんの弟子。
そして両親を失ったあなたを育てて行こうと決意した、哀れな人間……」
「…………やっと思い出した……」
レイミンは振り向き、レダを見た
その変わらぬ瞳に、レダは思わず息を呑んだ
「小さい頃を思い出そうとすると、私は吹雪の中で誰かと手を繋いでいるんです。
そんな状況でその人は、
『この吹雪が私達を隠してくれる』って言うんです。
震える声で、でも温かい手のその人は、そう言って笑うんです」
その言葉を聞いた時、レダは泣き崩れた
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