100人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話 ミッドチルダ
銀閃が奔る。
回避不可能な死の刄。
それを、自らの剣を以て向かい撃つ。
轟音。それと同時に衝撃波。それに乗るかのごとくザックスは相手から距離をとる。
したたる汗、息詰まる重圧。
達人同士の戦いでのみ発生する独特の雰囲気が、両者の時間感覚をずらし合う。
互いに攻め手の無い千日手。それを打破するために、ザックスは疾風と化す。
二人の身長差は歴然としている。三十センチ以上低いザックスでは、例え技量が互角でも、スタミナ、パワーで叶う道理はない。
魔洸エネルギーによっての肉体強化を封じられている以上それは至極当然のこと。
確かにザックスが本来の力を出し切ることができる状態にあれば、勝負は一瞬でけりが付く。
ままならない体に自然苛立つが、それを表に出すことはなく、冷徹なまでに刄を振るう。
得物は、刃渡り四十センチに満たないショートソード。
その刄をもち、男の振る大剣を避け、その腹部を柄頭で突き上げる。
くの字に折れ曲がる男の体、無防備となった後頭部もう一撃をたたき込み、完全に撃沈させる。
それを確認して、やっとザックスは大きく息を付いた。戦闘で火照った体が急速に冷やされ、やっと思考が戻ってくる。
そして認めたくない現実を再確認して、一度ため息を吐いた。
俺・・・何で子供に成ってんだ?
その答えに返答があるわけもなく、とりあえずザックスはその場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!