第一話 ミッドチルダ

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第一話 ミッドチルダ

銀閃が奔る。 回避不可能な死の刄。 それを、自らの剣を以て向かい撃つ。 轟音。それと同時に衝撃波。それに乗るかのごとくザックスは相手から距離をとる。 したたる汗、息詰まる重圧。 達人同士の戦いでのみ発生する独特の雰囲気が、両者の時間感覚をずらし合う。 互いに攻め手の無い千日手。それを打破するために、ザックスは疾風と化す。 二人の身長差は歴然としている。三十センチ以上低いザックスでは、例え技量が互角でも、スタミナ、パワーで叶う道理はない。 魔洸エネルギーによっての肉体強化を封じられている以上それは至極当然のこと。 確かにザックスが本来の力を出し切ることができる状態にあれば、勝負は一瞬でけりが付く。 ままならない体に自然苛立つが、それを表に出すことはなく、冷徹なまでに刄を振るう。 得物は、刃渡り四十センチに満たないショートソード。 その刄をもち、男の振る大剣を避け、その腹部を柄頭で突き上げる。 くの字に折れ曲がる男の体、無防備となった後頭部もう一撃をたたき込み、完全に撃沈させる。 それを確認して、やっとザックスは大きく息を付いた。戦闘で火照った体が急速に冷やされ、やっと思考が戻ってくる。 そして認めたくない現実を再確認して、一度ため息を吐いた。 俺・・・何で子供に成ってんだ? その答えに返答があるわけもなく、とりあえずザックスはその場を後にした。
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