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説明もなく、ただ戦場に放り込まれた。
だが、サリサに誤算があったとすれば、やはりそれもザックスであったということか。
すでに十二戦。すべてを勝ち抜いた彼を見て、彼女は不敵に笑みを浮かべるのみ。
「で、何のようだ、主催者様。一介の闘士にお言葉とはあまりにも過分な配慮に思われますが」
そんな彼女にザックスは敵意を隠す事無くにらみつける。周囲の護衛が俄かに殺気立つが、そんなものをザックスは気にも止めない。
ザックスはすでに彼女の力を知っている。一端ではあるが確かに。
まわりの護衛など話にもならないであろうその力を。
「ふふ。そう警戒しないで。別にとって食うわけじゃないんだから」
「はっ。どうだかな」
辛辣に返すザックス。だが彼女がその程度で揺らぐはずもなく、ただその笑みを深くするだけでかわしてみせる。
「まあ、いいわ。私もただの確認にきただけなのだし」
「確認?」
「あら、忘れてしまった?後たった三戦よ」
その言葉に自然ザックスの視線は鋭くなる。だがそれを意に介することもなく、ゆっくりと彼女は続ける。
「大切な、大切なあなたの剣。きちんと帰ってくるといいわね」
くすくす、という含み笑いと共に彼女はザックスの横をすりぬける。
それをザックスは睨み付けるしかなかった。
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