第一話 ミッドチルダ

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説明もなく、ただ戦場に放り込まれた。 だが、サリサに誤算があったとすれば、やはりそれもザックスであったということか。 すでに十二戦。すべてを勝ち抜いた彼を見て、彼女は不敵に笑みを浮かべるのみ。 「で、何のようだ、主催者様。一介の闘士にお言葉とはあまりにも過分な配慮に思われますが」 そんな彼女にザックスは敵意を隠す事無くにらみつける。周囲の護衛が俄かに殺気立つが、そんなものをザックスは気にも止めない。 ザックスはすでに彼女の力を知っている。一端ではあるが確かに。 まわりの護衛など話にもならないであろうその力を。 「ふふ。そう警戒しないで。別にとって食うわけじゃないんだから」 「はっ。どうだかな」 辛辣に返すザックス。だが彼女がその程度で揺らぐはずもなく、ただその笑みを深くするだけでかわしてみせる。 「まあ、いいわ。私もただの確認にきただけなのだし」 「確認?」 「あら、忘れてしまった?後たった三戦よ」 その言葉に自然ザックスの視線は鋭くなる。だがそれを意に介することもなく、ゆっくりと彼女は続ける。 「大切な、大切なあなたの剣。きちんと帰ってくるといいわね」 くすくす、という含み笑いと共に彼女はザックスの横をすりぬける。 それをザックスは睨み付けるしかなかった。
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