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息抜きをかねて、ザックスはミッドチルダの町に足を運ぶ。
場所は、先の廃墟にほどちかい、されど空港整備により今一度活気を取り戻した場所。
とは言っても、中心を地区や、東部に比べると未だ遅れが目立ち、木々が生い茂る場所。
その近くに、ザックスが行きつけにしている店があった。
太陽が上りはじめた頃に開店し、沈む前には閉店するという奇妙なバー。
その役割を知ってさえいれば納得なのだが、ほとんど知りえるものが居ない以上、この店がミッドチルダの都市伝説になる日も近いのかもしれない。
そんな益体もないことを考えつつ、ザックスはその店のドアを開け放った。
カラン。と、ベルが音を立てる。それが薄暗い店内に響くのを聞きながらザックスはいつもの席へ向かう。
一番奥のカウンター。座ると同時にマスターのしかめっ面が目に入った。
「マスター、いつもの頼む」
その言葉にマスターは頷きグラスに氷と琥珀色の液体をいれ、ザックスに向けて滑らせる。
それを、あっさり受け、ちびりと、舐めるように口に含み、ゆっくりと味わう。
「ふぅ」
そしておもむろに息を吐いて、近場にあった古めかしい本を手に取った。
ほんの題名は魔導公式基礎編である。
ゆっくりと読み進めるザックスにマスターが重々しく口を開いた。
「進んでいるか?」
「まあね。だけどまだまだ。発動だけならともかくとして、戦いに組み込むにはあまりにも拙い」
「あれほど鮮やかな肉体強化魔法を行使しておきながらか?」
「あれは、違うよマスター。確かに何か超常的な力での強化という点では同類かもしれないけど結局根本的に使ってる力が違うからね、どうも慣れないんだ」
その答えになるほどと、頷きを一つ返し今度は苦笑しつつザックスを諫めた。
「いや、私の言えた義理ではないが、・・・その年からの飲酒はどうかと思うぞ」
「ほっといてくれ。俺だって好きでこんな年格好してねーよ」
その言葉にマスターは首を傾げた。
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