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「ところで、おまえはデバイスを使わないのか?」
マスターがふと思い出したかのようにザックスにといかけた。
だがザックスは、それが何のことかわからない様子で首を傾げた。
「まて。まさかお前、デバイスを知らない?」
その言葉をザックスはやや躊躇いながらも首肯する。
「いや、まさかある程度魔法自体を使える奴が、デバイスについて知らないとはな。・・・盲点だった」
「いや、ため息はいいから教えてくれよマスター」
なにやら、納得しているバーの主人を素早く現実に差し戻させながら、ザックスは本を置いて、身体ごと向き直った。
「ん、そうだな。俺も専門家ではないし、詳しくは知らないが、掻い摘んで言うと、魔法を行使するための補助機械と言うものだ」
その言葉に興味深気に頷きを返し、続きを促す。
「ほかにも小難しい事は、色々あるが今は省略して分類とそのメリット、デメリットだけ教えておく。興味が湧いたら自分で調べてくれ」
「わかった」
マスターに答えを返して、ザックスは苦笑してしまう。
ザックスとマスターの関係はそれ程深くはない。
何せ未だ出会ってから二週間とたっていないのだからそれは当然だ。
だがマスターはすでにザックスの事をかなり深く理解している。
何せ、ザックス自身いらないと、切り捨てるであろうことを把握し、必要最低限のことのみを伝えてくれるのだ。そんなマスターに心の内で感謝する。
異邦人であるザックスを受け入れてくれた、彼の確かな絆。
大げさかもしれないが確かにそれでザックスは救われていたのだ。だから、
「そして、ユニゾン型デバイスね特徴だが・・・と、聞いてるか?」
「ああ。もちろんだ」
ジト目でザックスを睨むマスターに先を促しながら、心に誓う。
そう、いま、ここにある平和を。
それが、ザックスの今持つ、嘘偽りない真実だった。
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