100人が本棚に入れています
本棚に追加
結局閉店間際までバーで粘ったザックスは、マスターに紹介されたデバイスマスターに会いに行くため、短距離線のレールウェイに向かっていた。
売場で切符を買い、乗り込んだ後は、ただ流れゆく景色をぼんやりと眺めていた。
ちなみに切符代などは、ザックス自身のポケットマネーから出ている。闘技場の闘士は、その戦いのランクに比例して高額のファイトマネーが支払われる事になっており、ザックスは闘技場の中でも最高位に位置していたため、懐具合はかなりあたたかい。故に金銭面で不自由することもなく生活することができたのだ。
沈みゆく太陽が街並を紅く染める風景。それは、どこか、ミットガルで見た風景と重なり、少しばかり胸を熱くする。
それをかぶりを振って、振り払えば、すでに目的の駅についていた。
ケルイオン。そう呼ばれる街は、ありていに言えば歓楽街であり、それ故にがらも悪い。
そこそこに発展し、だからといってそれほどに大きくもないこの街は、夜も明かりを絶やさぬ事で人を呼ぶ道を取ったのだ。
だから、そんな街に降りたザックスはひどく浮いて見えた。
確かにザックスの雰囲気は大人びている。だがいくら大人びているとは言え、所詮肉体年齢は10程度。どうあってもこの街の雰囲気に合致しない。
だが、そんなことを今更ザックスが気にする訳もなく、手渡された地図をもとに歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!