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「おお!良く来たなー!ダイナ、来い来い」
紘人くんは、ポンポンと足を叩き わたしを呼びます。わたしもいつもはその呼び声に応えて 足の間に丸くなるのですが、いまは行きません。
紘人くんに撫でてもらうのはとっても気持ちがいいので、尻尾がゆらゆらしてしまいますが 今は我慢です。…我慢です。
なんてったって、わたしが来たのは紘人くんにお説教をするためなんですから。
ふーっ!と威嚇をしてみせましたら、紘人くんは少し悲しい顔をして ぽつり と漏らします。
「ダイナも柊も、俺から離れていってしまうんだよな。いつまでも、いつまでも、このままでいられないこと位解っているけど……。それでも淋しいなあ」
そう言って、へらりと笑いました。なんだか、しなびたキュウリのようです。
なんだか少し紘人くんが可哀相に思えてきたので、近づいて ペロリと舐めてあげました。そして足の間にくるりと丸くなり、 お説教を始めました。それはとってもとっても優しくしてあげたんですよ?初めはもっと厳しく言う予定だったのですから。
(柊ちゃんは柔らかくて、少しでも傷ついたらなかなか、直らないんですよ。まるでマカロンみたいに切れ目はもとには戻らないんです)
紘人くんはわたしの言うことを解ってくれたでしょうか。それとも にゃーにゃー言っているようにしか聞こえなかったでしょうか。どちらにしろ、もう一度、柊ちゃんを泣かせたら 猫パンチ を喰らわせてやろうと思います。
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