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冗談ではありません。
私は女性に連れられてふらふらと遊び回るような質では無いのです!
ただでさえマデリンを連れているというのに、これ以上増えたりしたら……!
だというのに、マデリンは何が可笑しいのかずっとにやけっぱなしなのです。
やはり女性というものは理解出来ません。
「出ましょう、マデリン。混んでいますから、長居しては失礼です」
「そうね」
女性達の妙に熱っぽい視線を感じ、私はうんざりしていました。
私の本当の姿を見せてやったら、どれだけ驚くか考えることで、何とか気を鎮めたのです。
……私の本当の姿ですか?
青銅の鱗に黒い瞳の竜ですよ。口から硫黄の混じった炎を吐くんです。意外でしょう?
悪魔というのは、見た目は美しく繕う者なのです。
また話が逸れてしまいました。
私はあまり優秀な語り部では無いようですね。
続きを話すとしましょうか。
※
食事も終え、私達はいよいよ劇場へとたどり着きました。
着飾った貴婦人や、エスコートする紳士でごった返すそこは、またもやマデリンの謎の羞恥心を喚起したらしく、しきりに他人と自分のドレスを見比べていました。
女性とは美しさを追究する性ですから、仕方の無いことかもしれません。
「……マデリン……」
「……悪魔の……」
此処に来てまた、マデリンの噂がたっていました。どうやら、有名な噂の様なのです。
幸い、マデリンには聞こえていないようでした。
折角の外出を、こんな噂で嫌なものにされては不憫ですからね。……失礼な、このくらいの感情は持ち合わせています。悪魔とて、極悪非道なだけでは無いのですから。
なにもかもが始めてのマデリンの腕を引き、私達は座席に座りました。
実を言えば、私はこの演目を知っていたのです。
何故ならこの話は、原作が書物として既に出版されていたからです。
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