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私が異次元をふらふらと漂っていた頃の話でございます。
確かあれは、今から二百年程前の事でした。
随分しっかりした召喚魔法が聞こえて来たものですから、一体どのような術者が私を呼んでいるのかと思いまして、召喚呪文に引き寄せられるように私は地上へと出たのでした。
私が呼び出されたのは、薄暗い部屋でした。
家具からして、殿方の部屋ではありません。それに何より、私の前に立っていたのは、私の肩程までしかない、幼いお嬢さんだったのでございます。
「貴女が私を呼び出したのですか?」
私は彼女に問いました。
「ええ、そうよ。意外かしら」
しっかりとした声色で、彼女は答えました。
見れば美しいお嬢さんでした。肌は白く、目は鮮やかな緑、髪と睫毛は見事な金髪でした。折れそうな腕や腰を絹のドレスに包み、手には黒魔術の古い本が握られていました。
「私は悪魔メフィストフェレス。仲間からは『クロノ』と呼ばれております。お見知り置きを」
「わたくしはマデリン。呼び捨てで構いませんわ。わたくし達人間よりあなた達悪魔の方が、よっぽど優れているんですもの」
それが私と、マデリンの出会いでした。
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